2018年03月08日

『 シェイプ・オブ・ウォーター 』

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『 シェイプ・オブ・ウォーター 』公式サイト

鑑賞日:2018年3月4日(2D字幕)

次は大本命「シェイプ・オブ・ウォーター」行くよー。

「シェイプ・オブ・ウォーター」デル・トロ版美女と野獣というか、そもそもコンセプトが美女と野獣ではないと思う。そういや世界のあらゆる御伽噺等に美女に化けた物の怪と人間が結ばれる話は多いけど、外見や身分で欺くことのない真の愛とはこれだというデル・トロ監督の提示。

ちなみにディズニーアニメの「美女と野獣」を思春期のみぎりに見た際、結末を見て「なんで王子に戻んだよ!It’s meじゃねーよ!!野獣を返せよ!!」「なんで唐突にわいた王子で納得するんだよ!お前が好きだったのは野獣じゃねーのかよ、ベル!」と怒り狂う友人たちに囲まれた環境で育って良かったと思う。

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美術や音楽は見事に50年代ノスタルジーをまとい、デル・トロらしい暖かくて暗いシャビーな感じがたまらない。それに加えて今回は半魚人なのでぬめりと生臭さと湿気が漂う、まさに暗い水槽にたゆたうような質感の映画。生臭い描写はいろいろあるんだけどね。

あ、舞台は1962年だった。

時代設定的にも登場するあらゆるマイノリティたちの不当な扱いにムカムカするシーンが所々にあるんですが、皆孤独ではあるけれどちゃんと理解者もいるので救いはあるんですよ。特にオクタヴィア・スペンサー演ずる主人公の職場の同僚はすごい包容力だ。

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オクタヴィア・スペンサー演ずる清掃婦のゼルダ。とにかく大きな声でよく喋る。なんかこういうおばちゃん懐かしい。何でもはっきり言うけどあらゆる局面で彼女も社会的弱者であり、彼女なりに懸命に生きていることを感じさせるキャラクターだ。イザベラとは10年来の同僚ということだが、きっと彼女も最初は手話が解らずイザベラと意志の疎通をするのが大変だったと思うんだけど、そんな大きな手間を踏んでも二人に友情が芽生えたのはお互い孤独な者同士の共感があったんだろうなあと思う。今やゼルダが完全におかんポジションだけど。

そうそう、「緑は未来の色」っての、なんか解る気がするんだ。

あ!「シェイプ・オブ・ウォーター」のストリックランドやってたマイケル・シャノンって、ゾッド将軍の人なのか!!

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ストリックランドは女性に対してのオトコの誇示の仕方がゲスいし、白人男性という最強ポジに居座りながら力こそ正義、俺のような男に負けはない主義甚だしいキャラクターなんだけど、上司に有能だと認めてもらうために必死な姿とか自分の精神安定と肯定のために自己啓発本(笑えることにトランプ大統領の愛読書としても有名なやつを)読んでたりする姿とかもちゃんと描かれているので、極端なキャラクターだけどどこか我々とも繋がっているものを感じるキャラクターで、人間が陥り易い「普通の定義」を歪ませた結果を見せられているようで、この男が弱っていく姿を見るのはザマアミロとうわあ…が入り混じったモヤッとした気分になるんだよね。

ストリックランドのセクハラ、パワハラ発言マジムカつくし、そのマッチョイズムにイライラするんだけど、本人もそれが強い故に自滅しているのでもはや呪いだな、と…。あとジャイルズのダイナーの店主とのやりとりは本当に悲しくなるんだ。後から職場復帰できない理由も察せられて。

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ジャイルズがダイナーの店主に失恋するシーンは本当にすごく印象に残ってる。身寄りのないゲイの老人。多分それが理由で彼は家族もいないし、仕事も失っている。仕事に関しては広告に写真が台頭してきた時代でイラストは古いと言われ始めてきてしまった時代のイラストレーター。自分もいろんな意味で時代遅れな人間だなあとつくづく思うし、将来もきっと孤独死すると常日頃思っているからジャイルズの姿は自分の姿のようにも見えて辛かった。本当の自分を打ち明けられないから不味いパイを買ってダイナーに通い続けてきた彼が寂しさのあまりふと一線を超えた瞬間に降り注ぐ氷点下対応。あれは……泣いちゃうよ……。

それにしても、映画のくくりの最後の一編の詩?は美しかった。shapeを気配と訳すの、美しいなーと思ったり。


〜〜「シェイプ・オブ・ウォーター」アカデミー賞4冠の報を聞いて〜〜

わお!作品賞も監督賞も!!おめでとう、デル・トトロ!!

しかし「ブラックパンサー」にしろ「シェイプ・オブ・ウォーター」にしろ今のハリウッドがフィクションの形を取りながら痛烈にトランプ政権批判のポーズしてるのは良いことことだと思う。

図らずもアカデミーの結果知る前に「シェイプ・オブ・ウォーター」見てこれて良かった。なんとなく。

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「シェイプ・オブ・ウォーター」の不思議な生き物は目の網膜の感じが魚というより両生類な感じがよく出ててすっごい良い。目と唇に監督はこだわったというが、唇の造形は紛れもなくダグ・ジョーンズ。

一夜明けて、つくづく監督がスポンサーにあれこれ口出しさせないために半分自腹を切って作った映画がアカデミー作品・監督賞を獲ったってすごいことだわ…。完全に世間受けから外れた作品、しかもファンタジージャンルに入るような題材の作品がアカデミーに認められるって本当快挙。

スメルズ・ライク・オタク・スピリット代表なデル・トロ監督がアカデミー監督なんて天上人になることにちょっぴり淋しさも覚えるのだけど、彼が、彼の愛する世界が認められたということは本当に嬉しい。デル・トトロ、トトロ♪ オタクの森にむかしから住んでる〜〜♪

「シェイプ・オブ・ウォーター」は絶対響かない人や生理的に拒否る人がいるのは明確に感じる映画なんだけど、解る人には大切にしてあげてね…って感じの映画だ。でもそういう映画がアカデミー賞って確かに凄い…。

うん、デル・トロの大事な破片、大切にとっといてね…って感じの。



posted by 益子繭己 at 23:30| Comment(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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